無農薬の米づくり<栽培技術と実際>

目次

1.無農薬・無除草剤・無化学肥料への思い

2.自然農法・自然栽培の基本は自家採種

3.美味しい無農薬米は品種選定から始まる

4.無農薬米づくりのコツは良い苗を育てること
~三つ子の魂百まで~

5.自然農法・自然栽培のお米作りの土台となる基本

6.自然の摂理に従う自然農法・自然栽培

7.自然農法・自然栽培の「雑草対策」

8.無農薬の米づくりに欠かせないこと<基本を徹底する>

9.無農薬完熟米

10.せっかくの自然栽培米・自然農法米、乾燥から出荷まで

自然農法・自然栽培の米づくり
~田んぼへの関わり方とその実際~

田植え後、自然農法無農薬の田んぼにて
田植え後、自然農法無農薬の田んぼにて

田植え後、自然農法無農薬の田んぼにて

1.無農薬・無除草剤・無化学肥料への思い

無農薬米への思い、人を良くすると書く「食」

はじめに

●人を良くすると書く「食」、自然農法・自然栽培の米作りを生業とする私の食へのこだわりは人一倍強いです。現在、世の中に出回っている食のほとんどは、農薬や除草剤や化学肥料等と密に結びついています。いつか本当に安心して安全に食べることができる食で満たされる世の中になればと願っています。●価値観や考え方は人それぞれです、これはあくまで個人的な想いです。私は冒頭で述べた、真の意味で人を良くする「食」が今や極めて少ない状況であると思っています。●私達が育てた自然農法・自然栽培の無農薬米がその「真の意味で人を良くする食である」ために、日々精進し努力していきたいと思っています。無農薬・無除草剤・無化学肥料は栽培の大前提です(加えて自然栽培では完全無肥料です)。稲には栽培者の気持ちが伝わります。子供と同じ、稲は育てる人を見ながら育ちます。これはとても大切なことです。
~私達のモットー、それは無農薬、無除草剤、無化学肥料はもちろんのこと、自分達家族が安心して食べることができる、自分が本当に食べたいと思える無農薬のお米を、消費者の健康と幸せを願いながら精一杯育てることです。

2.自然農法・自然栽培の基本は自家採種

無農薬の田んぼに育ち、適応した種もみを残す

自家採種した自然農法無農薬の種もみ(品種:にこまる)
自家採種した自然農法無農薬の種もみ(品種:にこまる)

自家採種した自然農法無農薬の種もみ(品種:にこまる)

自家採種の意味

自然農法・自然栽培の基本のひとつは自家採種です。毎年種子(種もみ)を購入し更新した稲と、自家採種を長年行ってきた稲とでは、その田んぼの土への適応性などが著しく異なってくる可能性があります。つまり同じように栽培をしたとしても、自家採種を繰り返してきた稲の場合、その風土、気象、田んぼ、土、ひいては栽培者にも馴染んでおり、生育および食味において素晴らしい力を発揮できる可能性を秘めているということです。

この田んぼで育ち、この田んぼに適応した種もみを毎年選別して残していく。そうして代々受け継いでいきながらこの土地の、この風土の、この田んぼに合った種に育っていきます。種もみもまた土と同じように育っていくのです。種もみを育て残していくことは自然農法・自然栽培の稲つくりを営むものにとっては欠かすことのできないとても大切な仕事です。そうして自家採種した種もみには、栽培者の思いや願いや真心も詰まっています。種もみにも心は通じているのです。自家採種した種もみから育てた自然農法米・自然栽培米は一味違います。

3.美味しい無農薬米は品種選定から始まる

にこまる(自然農法米・自然栽培米)が美味しい理由

無農薬自然農法にこまるの稲穂
無農薬自然農法にこまるの稲穂

無農薬自然農法にこまるの稲穂

涼しい秋に穂を育てる~稲刈りは10月中旬から~

稲も人と同じく、夏の暑い夜はゆっくりと休むことができません。夜が暑いとすっかり体力(光合成産物)を消耗してしまいます。出穂(穂が出ること)はまさに稲の出産にあたり、多くの体力(光合成産物)を必要とします。

つまりまだまだ暑い夏に穂が出るということは、お米(稲穂・もみ)を美味しくかつ栄養たっぷりに育てることができにくくなるということです。稲の出穂時期は、お米を育てる上で決して見逃してはならないとても大切で重要なポイントなのです。

出穂時期は、①お米の品種の選定と②田植え時期により、しっかり調整することができます。

当農園では、数多くの品種の中から、出穂が秋頃で(晩生品種)、自然農法の無農薬栽培に適し、大変美味しく優れた品種である「にこまる」を選びました。

ここ京都丹波地方では、6月中に田植えを行えば、秋の気配を感じる爽やかな風が吹き、ちょうど涼しくなり始める8月の終わりから9月の初めころに「にこまる」の稲穂が出始めます(出穂)。そして10月中~下旬頃から稲刈りを始めます。つまり晩生品種の「にこまる」は、夜が涼しく過ごしやすく、寒暖の差が大きくなる、まさに秋に稲穂が育っていくため、たっぷりの光合成産物(旨味、栄養)を一粒一粒のお米に送ってやることができるのです。

はらだ自然農園のお米の美味しさへのこだわりは、稲の出穂時期にもあるのです。

4.無農薬米づくりのコツは良い苗を育てること
~三つ子の魂百まで~

その1 無農薬・無肥料で育てるポット苗

無農薬・無肥料のポット苗
無農薬・無肥料のポット苗

無農薬・無肥料のポット苗

 最大の利点

●稲の苗を育てる時、一般的なほとんどの農家は、ひとつの箱になった箱タイプの育苗箱を用い、肥料を用土に混ぜて育てます(当農園の後述するポット育苗では完全無肥料の用土を用います)。●自然農法センターにいた頃、全国の農家生産現場をまわりましたが、箱タイプがほとんどの中で、1本の苗にひとつのポットが割り当てられたポットタイプの苗を見る機会が何度かありました。そのポット苗はがっしりとしていて逞しく、その力強さにすっかり魅せられました。●はらだ自然農園を立ち上げた時、苗は必ずこのポットタイプで育てると心に強く決めていました。●箱タイプでは一般的にはひとつの箱の中に何千本の苗が育てられ(苗数が少なくなるよう努力されている方もおられますが)、すべての苗の根がマット状に絡み合ったマット苗となります。しかしポット苗では、1ポットあたり2~3粒の種もみをまき1箱当たりの苗数も僅か448本と極めて少なく、かつ苗1株1株が独立して育ちます。●つまり、ポット育苗の最大の利点は、箱当たりの播種量がとても少なく、1ポットづつ独立していることです。つまり太陽の光をいっぱい浴びることができ、強く逞しく育っていくことのできる環境が整っているということです。

田んぼに根を張るポット苗

ポットタイプの苗は箱タイプの苗と違い、苗代(田んぼ)に根を張り自然由来の豊かな養分をしっかり吸収することができます。ポット苗が健康的で逞しいのはこうした根の張り方や土壌環境にもあるのです。(苗代については別の項で改めて述べたいと思います。)

三つ子の魂百まで

「三つ子の魂百まで」と言いますが、これは人に限った話ではなく、稲でも全く同じです。ごく小さい時の苗の性質(特性)がそのままずっと生長していく全課程で引き継がれていくのです。だからこそ、効率よりも、手間がかかっても、良い苗ができるポット苗を選ぶのです。無農薬・無除草剤・無化学肥料、加えて完全無肥料(自然栽培)の米作り、雑草が生える自然農法・自然栽培の田んぼで自立して育っていくためには代々引き継がれた性質、幼苗の時に培った素晴らしい特性を持った強くて逞しい苗が必要なのです。

その2 苗代(自然栽培田)で苗を育てる

苗代(無農薬田)にポット苗箱を設置
苗代(無農薬田)にポット苗箱を設置

苗代(無農薬自然栽培田)にポット苗箱を設置したところ。田んぼの上で出芽させて、田んぼの土で苗を育てる。

ポット育苗のもうひとつの長所

●ポット育苗のもうひとつの長所(最大の利点)は、苗代(田んぼ)に苗箱を設置し、苗が苗代(田んぼ)に根を張り、田んぼの土の養分を吸収しながら育つということです。ポット育苗が強く逞しく健康に育つのは、前項で述べた播種量の少なさ(伸び伸びと育つことができる環境)に加え、田んぼの上で出芽し田んぼの土で育っていくことができるためです。●はらだ自然農園の苗代(田んぼ)は無農薬・無化学肥料・無除草剤、そして有機物さえ使用しない完全無肥料です。苗は自然の土の力で育ちます。

5.自然農法・自然栽培のお米作りの土台となる基本

生きている土を育てる ~「田んぼの生き物」を育てる~

稲わらは田んぼの生き物達の食べ物になります。田んぼの生き物が元気な自然農法・自然栽培の無農薬米は一味違う美味しさです。自然(土)の深み、食べれば実感、納得頂けると思います。自然農法無農薬のお米づくりの最も大切な基本は土を育てることです。

豊年エビ、田植え後の自然農法無農薬田にて
豊年エビ、田植え後の自然農法無農薬田にて

豊年エビ、田植え後の自然農法無農薬田にて

土が力を発揮できるように助ける

●「自然農法・自然栽培のお米作り」の基本は?と聞かれて真っ先に浮かんでくるのは“育土(土を育てること)”です。無農薬でお米を育てていくためには各栽培過程における基本をひとつひとつしっかりと押さえていく必要がありますが、土を育てる“育土”は、栽培の最も土台となる基礎になります。●土は生きています、土は自ずと育っていきます、そして栽培者としての最大の仕事は土が育っていくのを助けることです。自然の摂理に則った関わり方をすることにより、土がより力を発揮できるように助けていくことが仕事です。●自然農法、自然栽培、あるいは自然農というと、自然任せ、自然放任、何もしない、というイメージを持たれる方もおられますが、はらだ自然農園が目指す自然農法・自然栽培のお米づくりは「自然の摂理に則った関わり方をすることにより、自然(土)が本来の力を発揮できるようにする」栽培にあります。●健康な土は「多種多様な命が密接につながり調和している状態である」と言えます。それは農業にとっては「土壌生物への衣食住の提供において、人(栽培者)が多大な好影響を与えている状態である」と言えます。つまり、いかに自然(田んぼ)に関われば土は田んぼは力を発揮できるのかということを日々の観察や農作業を通して考えていくということです。観察することが大切です。自然農法無農薬でお米を育てるということは、栽培を通して常にありのままの自然に関わっていくということです。栽培は観察から始まります。

食後に心地良い余韻が残るお米を目指して

●収穫後の田んぼは一面稲ワラで被われます。稲ワラは、稲の葉や茎や籾がついていた枝梗が混ざったものです。微生物を始めとした田んぼの生き物は主に稲ワラなどを基質(エサ)として生きています。●自然農法・自然栽培の田んぼに多く見られるトロトロ層は、雑草を抑え、稲の生育を促進しますが、土壌中の腐植や粘土を元に微生物や水生ミミズの働きによって形成されるものです。腐植の元は新鮮有機物の稲ワラなどです。●豊かな土が育んだ自然農法・自然栽培のお米ですが、その美味しさは雑味がなく、自然由来の深み・旨みがあります。お米の良さを見極めるポイントは後味の良さです。食後にいつまでもその心地良い余韻が残れば、それは自分の体に合った本当に美味しいお米だと思います。

米穀業界や米炊飯業界には、ご飯の味を味覚で検査している専門家がいる。ワインの味に詳しいソムリエに対比して、「ライスソムリエ」とでも言えば仕事の内容がわかりやすいのではないかと思う。その専門家の一人によれば、「この余韻のあるなし」で米は一流か三流かが決まるという。<堀野俊郎著「おいしいお米の栽培指針」(農文教1998)より引用> 

6.自然の摂理に従う自然農法・自然栽培

自然農法・自然栽培のお米作りは収穫直後から始まる

収穫後の様子(自然農法無農薬の田んぼ)
収穫後の様子(自然農法無農薬の田んぼ)

収穫後の様子(自然農法無農薬田)

秋の耕起を終えて(自然農法無農薬の田んぼ)
秋の耕起を終えて(自然農法無農薬の田んぼ)

秋の耕起を終えて(自然農法無農薬田)

★以下本文は拙著「自然農法の水稲栽培~栽培のイマジネーションとその立脚点~」(2009)からの引用を中心に話を進めていきます。

稲ワラはいったん風化させる~自然の摂理に従う~

恩師の言葉

●(財)自然農法国際研究開発センター(以下、自然農法センター)にいた頃(1997~2007)、恩師から耳にタコができるほど聞かされ続けた言葉があります。そのひとつが「作土全層に腐植を増やし未熟な有機物がない状態にすること」です。●つまり、土の中で稲わらをよく分解させよ、ということです。そうすることで、稲の根張りが良くなり、雑草は少なくなり、病虫害が減少し、食味も品質も向上するのです。これは長年受け継がれてきた自然農法の栽培の研究の成果であり、農家生産現場の経験から分かってきたことなのです。●ゆえに私も在籍当初から収穫後の田んぼの稲わらをどうのように土に戻していくか(土の中で分解させていくか)ということに強く興味を持っていて、自然農法センターの試験圃場や各地の農家現場で検討を重ねてきました。

無農薬の田んぼで検討を重ねる
~風化させてからすき込む~

以下本文は拙著「自然農法の水稲栽培」から引用

●すき込み時期 ~十分風化させてから~
農家現場ではいろいろな場面で、稲ワラの分解過程をチェックしてきました。中でも興味深かったのは、土中の稲ワラより、田面に露出した稲ワラの方が、明らかに風化が進み分解が進んでいる事実に何度か出くわしたことでした(写真1,2)。太陽光線を浴び、雨や風や泥にまみれ、稲ワラが風化していく様子を観察していると、自然の摂理が垣間見える気がしてきたのです。すなわち自然界では新鮮な有機物がいきなり土中にすき込まれる状況は他の生き物の介在抜きには考えられず、原則として土壌表面で風化作用を受けながらゆっくりと土に還元されていきます。片野教授の指摘も(次項参照)、仲間の農家が池のヨシが土壌に還元していく様子(湖沼生態系)からヒントを得られたものです。風化された稲ワラは自然の摂理の一端を示しています。またへの字稲作で有名な井原豊氏のこんな言葉があります。「自然界の現象はすべてへの字カーブ。クルマの走り方も、新幹線の走り方も、ゆっくりスタートして巡航、後半は惰力で急激な速度変化なく停止する。イナ作においても自然の法則に従い、初期ゆっくりスタート、中期に加速、後期は滑らかに降下するのが自然に合った生育である」(井原豊「写真集 井原豊のへの字型イネつくり」農文協1991より)
私は井原氏のこの言葉により、稲ワラ還元のイメージがより明確になりました。飛行機がゆっくり着陸していくイメージです。稲ワラは急激に土にすき込まれることなく、風化作用を受けながらゆっくりと土に戻っていくのです。農家現場で何度か稲ワラの還元方法についての話をした時、何人かの農家は「稲ワラは、生のものをいきなりすき込むより、風化させてからすき込んだほうがよく分解するよ」と当然のように話されたことがありました。

↑収穫後すぐ耕起を行い、しばらく湛水した後、落水した圃場。土中部分より表面に突き出ていた部分の方が明らかに稲ワラの分解は進んでいた(写真1,2)。(2004年10月25日、島根県安来市にて撮影)

<以上引用>

片野教授に学ぶ

片野学教授は、こうした一連の稲ワラの腐植化をいかに進めるかという命題のもと詳細な検討を加えられ、自身の著書の中でその手順に触れられています。その中からいくつかポイントなる部分を抜粋引用します。

○「まず、明らかになった点はイナワラの還元時期であった。従来、ワラは収穫直後の秋耕起時に土壌中にすき込まれていたが、この時点でのワラの色は黄緑か黄色であった。この時期では早すぎ、ヨシが水に触れる時点の色(茶~茶白色)に変色するまで、ワラを田表面に放置しておくべきではないかということに気付いていく。」
○「十月、コンバイン収穫時に五~八センチに細断、散布された生ワラがイナワラに変色していくためには(農家はワラの「味つけ」と呼ぶ)、岩手県で三〇日から四五日を要し、十一月下旬から十二月上旬の降雪直前の時期までかかる。この時期に、秋耕起、すなわち、イナワラを土中搬入することになる。」
○「田が十分乾いておらず湿った状態で秋耕起すると、翌春までにイナワラの変色、腐植が進まず、収量が低くなるとともに雑草でも苦しめられることがわかってきた。秋耕起はイナワラの変色に着眼するとともに、イナワラと田が十分に乾燥し、ロータリー耕をかけるときに土ぼこりが出るくらいのときを待ってできるだけ荒く行なうことがポイントとなることがわかってきた。」
○「棒くいのどの部分が真っ先に腐るかといえば、地際付近であることはよく知られている。また、森林原野生態系のA0層上部、腐葉層付近ではどんなに多量の雨が降っても、その直後の水分は手で握れば形くずれをせず、強く握るとじわっと水が出る程度に保たれている。地際部もA0層もいずれも水分は六〇~七〇%である。これ以上の水分含量となると、発酵ではなく腐敗となってしまう。秋耕起後に溝切りなどを励行するのは田の水分を六〇~七〇%に保持するためにも重要となる。過湿にならない状態でイナワラの変色を進めること、これがポイントとなる。」
(片野学著「自然農法の稲つくり」(農文教、1990)より)

自然農法無農薬の米づくり
~生産現場の実際、臨機応変に対応する~

●研究者から農家になってしみじみ痛感したことは、実際の現場では必ずしも教科書通りにできるわけではないということです。<これは自然農法センター時代から明確に分かっていたことですが、改めてしみじみと痛感したのです。>●専業農家ともなれば栽培面積も田んぼの数も格段に増えます。試験圃場のように1~2枚の田んぼに集中できるわけではありません。そして何より栽培を左右する大きな要素は天気です。特に専業農家の場合は、すべての田んぼの作業を終えるのには相当の日数を要します。天気の長期的な予想も必要です。●例えば秋、長雨が予想されるならば長雨の前に秋耕起を済ませたほうが栽培をトータルで考えた場合は遥かに賢明です。最悪の場合、そのまま春まで田んぼが乾かない場合もあります。田んぼの耕起は乾いた状態で行う必要があります。ワラを田面で風化させている余裕はありません。<しかし長雨が予想された時、その長雨の前にすべての田んぼの耕起を終えることができるかという問題もあります。実際、夜遅くまで真っ暗の田んぼの中で耕起を行うこともあります。>●理想にこだわるあまり栽培の全体的なバランスをくずしてはいけません。これは「稲わらを風化させる」秋処理に限ったことではなくすべての栽培過程に通じることです。実際の現場では日々田んぼと天気と相談しながら栽培全体のバランスを崩さないように臨機応変に対応していくことが求められます。

<余談>田んぼに棲息する水生ミミズの話

前掲拙著「自然農法の水稲栽培」より引用

●イトミミズの越冬と稲ワラの風化
さて、余談になるかもしれませんが、稲ワラの風化にちなんだエラミミズの話をしたいと思います。エラミミズはイトミミズの一種で、水中に生息する水生のミミズです。イトミミズは土を盛り上げて雑草を抑制するということで今やすっかり有名になりましたが、その中でもエラミミズは体が大きく動きも活発なタイプです。と言っても畑ミミズよりは小さく細く、手のひらに十分乗るサイズです(写真3)。イトミミズの特性を簡単に紹介しますと、田面で土の中に頭を突っ込んで、お尻(尾部)を水中に突き出してゆらゆらと激しく動かしているのが彼らで、そんな光景が自然農法田などではよく見られます。イトミミズはその体勢で微生物や有機物を泥ごと食べて、水中に突き出した尾部から土壌表面に糞を排泄していきます。イトミミズの口は極めて小さく、微粒子のみが摂食の対象となるため、土壌表層には微粒子状の糞がどんどん堆積していくことになります。つまり雑草の種子はイトミミズの口には入らないため、どんどんと土中に埋没していき発芽できなくなるということです。以上が主なイトミミズによる雑草抑制のメカニズムです(写真4,5)。

写真4↑は湛水状態におけるエラミミズの活動の様子。赤く見えているのはエラミミズの尾部部分で、実際は激しく揺れている。写真5は落水状態の様子で、浮草が田面にへばりついてしまっているが、エラミミズの糞(土)が盛り上がり、浮草はすっかり埋もれてしまっている。

このように、雑草を制御してくれるありがたい生き物です。そして彼らは落水後、土中に潜って越冬します。表1はエラミミズの越冬深度の傾向を調べたものです。エラミミズは落水に伴い適当な生育条件を求めて徐々に潜っていくことが見て取れます。こういった傾向は生き物全般に見られるもので、季節による環境の変化に伴い、生息エリアを変えていきます。田んぼに水が十分あれば、冬、雪の降る中でも、エラミミズが田面で活動している様子を見かけることがありますが、落水後は、土壌の乾燥と気温の低下に伴い、少しずつ深く潜っていくことが想像されます。つまり、表1から示唆されるように、落水後まもない耕起はエラミミズを傷つけその多くを死滅させてしまう危険性が高くなります。つまり次のような考え方も出来るのです。エラミミズが地中深くに潜った頃は、土壌の乾燥も進み、稲ワラも十分風化された頃であり、その頃に耕起すれば、エラミミズを死滅させることもなく、かつ稲ワラの腐熟化を促進させることができるということです。逆にエラミミズが表層で生息活動しているような土壌水分では、到底耕起に適した土壌状態にはなっていないということです。「何かを達成するために、ある何かを犠牲にしてしまうのは本物の技術ではないのではないか。本当の技術はすべてが生きるものである。」「ひとつが良いとみんな良い。」ひょっとすればエラミミズの越冬と稲ワラの風化の関係は決して偶然ではないのかもしれない、と感じています。(参考文献:栗原康(1983)「イトミミズと雑草―水田生態系解析への試み」化学と生物Vol21)

表1
エラミミズの越冬深度傾向(個体数/20×20㎝当たり、各一連)
(1999、原田)

採取深度
(cm)
0~7 7~14 14~21 21~28
耕起 0 0 29 11
無耕起 0 0 60 18

土採取時期:1999年3月6日、採取地:長野県波田町農業試験場A3圃場・表層腐植質多湿黒ボク土水田、処理:秋(11/24)耕起(10cm)の有無を設けて、それぞれ20×20cmの調査枠を設定し、深度別に採取した。

7.自然農法・自然栽培の「雑草対策」

無農薬の米づくりの雑草対策は「雑草を知る」ところから始まる

無農薬の雑草対策は「雑草を知る」ところから始まります。雑草は土の代弁者です。雑草の土を肥沃化するという役割(働き)を「認め」、「排除」という感覚ではなく、まずは栽培者として「土を育てること」に集中します。

オモダカの花(自然農法無農薬の田んぼにて)
オモダカの花(自然農法無農薬の田んぼにて)

水田雑草、オモダカの花(自然農法無農薬の田んぼにて)

雑草は土の代弁者

水田雑草の種類

●水田雑草は200種を越えると言われています。その中で特に覚えておきたい水田雑草は、①1年生雑草の(ヒエコナギ、ミゾハコベ、キカシグサ、アゼナ、タマガヤツリ、ヒロハイヌノヒゲ)、②多年生雑草の(ホタルイオモダカウリカワクログワイマツバイ、ミズガヤツリ、ヒルムシロ)③浮遊雑草の(ウキクサ、アオウキクサ、アオミドロ、アミミドロ、イチョウウキゴケ)④藻類の(シャジクモ)、およそ以上の十数種です。●しかし、本当の意味で稲と競合し稲の生育を阻害するものは下線の雑草のみです。その他の雑草が稲の生育を阻害していることが見受けられることもありますが、自然農法・自然栽培の田んぼにおいては稀にしか観察されません。200種を越える水田雑草の中で、稲と競合する雑草というのは意外と少なくほとんどの雑草は稲と共存しています。

雑草の発生状況から土の状態を見極める
~自然農法無農薬栽培の実際~

●除草剤を使わない無農薬の田んぼには雑草が生えます。その中でも雑草がとてもよく生える田んぼ、あまり生えない田んぼ、一枚の田んぼの中でも雑草が多いところと少ないところがあります。実は雑草は田んぼ(土)についてとても多くのことを教えてくれています。雑草は土の代弁者なのです。●一口に雑草と言っても、多くの種類があり、それぞれに特性が異なり、好む土壌環境が違います。つまり、無農薬の田んぼに発生する水田雑草の特性をよく知ることができれば、その発生状況から田んぼや土の状態を知ることができます。雑草の発生状況から土の状態を見極め、そこから土(田んぼ)への適切な関わり方(栽培のあり方)を見出していくことが可能になってくるということです。●このように自然農法・自然栽培の現場では、これまでの経験、調査や試験、観察などから得られた各雑草の特性をまとめ、実際の栽培に生かしています。

<しかし、そこは自然です、「こうすればこうなる」図式が通じるほど単純ではありません。自然は複雑な多重構造になっています。その奥は深く計り知れず魅力に満ちています。無農薬の米作りの現場では雑草対策がうまくいかず雑草が多発することもあります。日々勉強です。観察に始まり観察に終わる、よく見てよく観察して、自然と付き合っていきたいと思います。>

自然農法・自然栽培の「雑草対策」
~排除ではなく、土を育てる~

このように自然農法・自然栽培の雑草対策は、雑草を知り、雑草の役割を知り、雑草を観察するところから始まります。雑草は、自然の摂理に基づいて発生してきています。雑草は土を肥沃にする働きを担っています。こうした自然の摂理に基づいた雑草の役割を知るならば、雑草対策の立脚点は、雑草の“排除”ではなく、雑草の役割に“沿う”こと、つまり“土を育てる”方向にあると考えざるを得ません。実際、無農薬の米作りを実践する農家の多くが「土が良くなって草が減った」と実感しています。

参考・引用文献:拙著「自然農法の水稲栽培~栽培のイマジネーションとその立脚点~」(2009)

8.無農薬の米づくりに欠かせないこと<基本を徹底する>

無農薬の米づくりにとっての重要な<3つの基本>

当地のような山際の田んぼは、畦草刈りが多くとても大変ですが、畦の管理は最も重要な田仕事のひとつに数えられます。
①畦作り(管理)、②田面の均平化、そして③毎日の水回りは、無農薬(自然農法・自然栽培)でお米を育てていく上でとても重要で大切なポイントになります。

自然農法無農薬の田んぼ、田植え前
自然農法無農薬の田んぼ、田植え前

自然農法無農薬の田んぼ、田植え前

以下は拙著「自然農法の水稲栽培~栽培のイマジネーションとその立脚点~」(2009)より引用

田んぼを田んぼらしくする

昔、よく教えられました。「田の字のごとく畦をしっかり作ることから稲づくりは始まる」と。
自然農法無農薬でお米を育てていく上で絶対に欠かせない大切な3つの基本があります。

  1. 畦をしっかり作り、そして守る。
  2. 田面を均平にする。
  3. 適度な水持ち(透水性)を確保して、毎日水周りをする。

この3つです。
これは、ありとあらゆる技術の受け皿になります。
これが、整ってくれば技術は生きてきます。
これが揃うということは、「田んぼが最も田んぼらしい姿になる」ということです。
『田んぼを田んぼらしく』すること、これが自然農法無農薬の米づくりにとって欠かすことのできない最高の技術のひとつです。

水の力を生かす自然農法の無農薬栽培

実は、この3つの基本は、いずれも「水」に関わるものです。稲作文化が、遥か古代より絶えることなく受け継がれてきたのは、水の力に依るところが大きく、水の力を最大限に利用してきたからだと言えます。この「水」をいかに生かすか、無農薬の米づくりにとってきわめて大きなポイントになってきます。

無農薬田の土台となる基礎づくりを徹底する

無農薬の田んぼにとって、土台作り<①畦作り、②均平化、③水持ち(水周り)>は最も基本となる重要な技術です。農薬も除草剤も化学肥料も使わない自然農法・自然栽培の米づくりにとってどうしてこの3つが大切になってくるのか、もう少し踏み込んで詳しく説明したいと思います。

①畦作りの意味

●自然農法センター時代、全国の無農薬の田んぼを調査・観察しました。やはりそこで実感したのは畦をしっかり管理することの大切さでした。特に畦から水が漏れないように気を配ることが必要になってきます。
●「畦から水が漏れる」または「水持ちが良くない」というのは何を意味するのか?それは①田んぼの水温が下がる、②水に溶け込んだ養分が流亡する、③水田生態系が安定しない(推測)、ことを意味します。
●田んぼで温められた水を養分共々逃してしまう弊害は予想以上に大きいものです。畦漏れは最小限に抑える必要があります。特に自然農法・自然栽培の場合はシビアに管理することが大切です。
●微生物を始めとした土壌生物の活動は、適温以下の温度帯ならば、水温(地温)が高いほど活性化します。すなわち水温は、‘土壌養分の有効化,に強く影響し、稲の初期生育に多大な影響を及ぼします。特に田植え時期は、気温(地温)が低いこともあり、地力窒素の発現(地温15℃以上)が乏しいこともあります。低温付近では僅か1~2℃の差でも生物活動にきわめて大きな影響を及ぼすため、漏水による水温低下は要注意です。
●また観察からは、田んぼが適度な水持ちと適度な透水性(地下浸透)を確保することで、水田生態系が安定し生物間のつながりが濃密になるような印象を受けます。つまり水温、養分状態、水の流れが一定レベルで安定化することで、土壌微生物のコロニー形成や他の生物の活動を促進させる方向に一斉に動き始めるように感じられます(推測)。
●忙しさの中、畦草刈りが大変に感じる時もあります。特に当農園のような山ふもとに広がる田んぼの場合は畦が大きく斜面になっており平野部の田んぼに比べて、畦草刈りの面積は数倍にも及びます。しかし毎日の水周りで踏み固められ、畦草がきれいに刈られた畦は実に美しい雰囲気を醸し出します。畦は、稲を育て、田んぼの生き物達も育んでくれます。労力の許す限り、畦は美しく管理したいと考えています。農作業はなかなか追いつきませんが春から秋にかけての農繁期はほぼ毎日のように畦草刈りに精を出しています。

自然農法無農薬の田んぼにて
自然農法無農薬の田んぼにて

自然農法無農薬の田んぼにて

②均平化の意味

●もし田面の高低差がなく完全に均平であれば、水管理はどれほど素晴らしいものになることでしょう。田面が均平である最大の利点は、状況に応じた水位を田んぼ全体に的確に設定できるということです。特に除草剤を使わない無農薬の米づくりの場合は、この均平化が重要な意味を持ってきます。
●もし、田面が不均平であれば、①稲の生育が揃わない(欠株含む)、②田面の高い所に雑草が発生する、③田面の低い所はイネミズゾウムシの害を受けやすい、などの弊害が生じるおそれがあります。そのため④高低差が大きい程、稲や雑草、場合によりイネミズゾウムシとのかね合いをはかる必要があり、それだけ水管理は難しくなり、適切な水深を維持することも難しくなります。また、田植え前ならば、⑤代かき時に田面が不均平であると様々な問題が生じてきます。
●例えば、田植え後間もない頃は、深水にすると田面の低い所の苗は水没し、逆に田面の低い所に合わせた浅水管理を行うと高い所が露出してしまいヒエ等の多発を招くことがあります。さらに、田面が高い所ほど表層土のトロトロ層(土壌中の腐植・粘土に水生ミミズや微生物の働きが加味された、土壌表層にある文字通りトロトロとした層で雑草が生えにくい)は薄く、田面が低い所ほどトロトロ層は厚く形成される傾向が見られます。そのため、どうしても田面が高い所ほど土は固くなりやすく、コナギ等雑草の発生も多くなってきます。ゆえに、田面の均平化は、栽培管理上欠かすことができないポイントなのです。

③適度な水持ちと透水性

稲の生育にとっては、「水持ちを良くする」と同時に、「適度な透水性」(水の縦浸透)を確保することが必要になってきます。特に代のかき過ぎによる土壌物理性の悪化(土壌構造が目詰まりを起こし、透水性が極端に悪くなること)は、水稲根の伸長を抑制し、雑草やイネミズゾウムシを誘発するなど、各種弊害を複合的に発生させてしまう可能性があります。すなわち稲の生育にとっては、適度に水持ちがあり、適度に水が地下に浸透していく必要があるということです。‘流れる水は決して腐らない,と言います。土の中にも「適度な水の流れ」が必要です。

まとめ

‘水,をいかに生かすか。これは除草剤を使わない無農薬の米づくりにとって、もっとも大切で、もっとも重要な命題のひとつです。水を最大限に活かすための①畦作り、②均平化、③適度な水持ちは、自然農法・自然栽培の米づくりの基本中の基本です。
~「漏水させず、淀まさず、水は適度に持って、適度に減るのがよし」~です。

引用文献:拙著「自然農法の水稲栽培~栽培のイマジネーションとその立脚点~」(2009)

9.無農薬完熟米

できる限り完熟させてから収穫する無農薬米へのこだわり

当農園では、できる限り完熟させてから稲刈りを行います。完熟した無農薬玄米は食べやすく味に深みがあります。当農園の無農薬玄米に混じっている完熟米と同程度の大きさの青米はまもなく完熟米となる玄米です。完熟米は噛めば噛むほどに自然由来の旨味を感じることができます。

稲穂、自然農法無農薬栽培
稲穂、自然農法無農薬栽培

稲穂、自然農法無農薬栽培

自然農法・自然栽培のイネは最期まで生命感を保つ

稲は元来、極度に田んぼを干してしまわない限り、生命機能を保ち続けます。とりわけ自然農法・自然栽培の稲は、土壌が健全で根の力が強いため、その傾向が強く見られます。その証拠に、枝梗は刈り取り時まで青みが残っており養分を籾に送り込むための機能を維持し続けていることがよく見受けられます。つまり、自然農法・自然栽培のイネは、命が尽きるその瞬間まで籾に養分を送り続け、次世代を担う籾をしっかり‘完熟,させる力を持っているということです。したがって、土壌水分は収穫ギリギリまで保つことが理想と言えます。しかしコンバイン作業に支障が出ないよう、排水性や天候を考慮しながら、適度なところで水を切り上げます。‘究極にこだわる,と栽培のバランスを崩してしまうことがあるので注意が必要です。刈り取り時期は周囲の農家(圃場)より遅くなりますが、できる限り完熟させてから収穫するようにしています。これは何より稲本来の完熟させる力を生かした自然由来の本当の美味しさを求めてのことなのです。

参考・引用文献:拙著「自然農法の水稲栽培」(2009)

できる限り完熟させる~完熟米の収穫~

稲穂の下部に相当量の青味を残して収穫するのが一般的(常識)ですが、当農園では、収穫時まで稲の活力を保たせるため、できる限り完熟させることを目指しています。玄米の青ツヤ感がなくなり落ち着いた感じになり、味に深みが出ます。当農園の無農薬玄米に混じっている完熟米と同程度の大きさの青米はまもなく完熟米となる玄米です。完熟米ならではの味に仕上がります。噛めば噛むほどに、自然由来の旨味を感じることができます。

10.せっかくの自然農法米・自然栽培米、乾燥から出荷まで

高品質へのこだわり5つのポイント

  1. ご注文を受けてから、発送前に精米します。
    >作り置きはしていません。
  2. 年間を通し低温で貯蔵しています(玄米専用冷蔵庫で10℃以下/夏期15℃以下)。
    >常に変わらない収穫したての美味しさをお届けします。
  3. 安心の石抜き済です。かつ色彩選別機でしっかり選別しています。
    >安心してお召し上がり頂けます。
  4. 精米時に温度が上がらない低温精米で無農薬米本来の美味しさを保持しています(低温精米機を使用)。
    >お米の旨みを逃さない低温精米
  5. 自然乾燥に近づけるゆっくり低温乾燥(最初は風のみ、後30℃以下で乾燥、お米を一旦寝かせる段階乾燥)、だから当農園の無農薬玄米は生きている、発芽玄米ができる。
    >乾燥は大切な作業です。美味しさにとことんこだわります。

こだわりの低温乾燥、だから当農園の無農薬玄米は生きている、旨みがある、発芽玄米ができる

稲刈り、自然農法無農薬田にて
稲刈り、自然農法無農薬田にて

稲刈り、自然農法無農薬田にて

稲穂の完熟を待ってから刈る

●「無農薬完熟米」の項でも述べましたが、当農園ではできる限り籾を完熟させたいと考えているため、刈り取り時の籾水分が20%の前半から、場合により20%を切ってから稲刈りを行うようにしています。つまり田んぼで稲穂の籾の完熟を待ちながら、自然に少しずつ籾水分が落ちていくのを待ちます。●このように田んぼの中で籾が完熟していく過程で自然に水分が抜けていくほうが自然由来の旨みがお米に残ります(ちなみに一般の慣行農法ではむしろ逆に早刈りが進められていますが、自然農法・自然栽培では一般で言われているより遅く刈るほうがお米は美味しいです)。

自然のリズムでゆっくり乾燥
~低温30℃以下で無農薬玄米の旨みを逃さない~

●そして稲刈り後は籾を乾燥させる必要がありますが、貯蔵性や食味品質を考慮して籾水分は15~15.5%に乾燥調整します。田んぼで20%前後に籾水分が落ち着いているので、稲刈り後の籾の乾燥は、自然のリズムでゆっくり乾燥させることができます。●乾燥は、最新式の遠赤乾燥機(太陽光に含まれる遠赤外線を使用して自然乾燥に近い食味の良い乾燥、と謳われている)を使用しています。決して機械任せにはせず、天候や籾張り込み時の水分等を考慮しながら、随時手動で調整を行い、お米の旨味を逃さない「ゆっくり低温乾燥(30℃以下)」を実施しています。乾燥終盤は何度も高精度水分計で籾の水分状態を計りながら、適正水分に仕上げていきます。●乾燥は初めは風だけで行います。全体がなじむのを待ってから、低温の30℃以下で乾燥させていきます。この30℃以下という温度設定は極めて低い、食味品質を保つ最高レベルです(ゆえに、もちろん玄米は生きており、発芽させることができます、発芽玄米になります、生育環境が整えば、玄米から育苗して、稲を育てることもできます)。天気の良い日は風だけで乾燥を進ませることもあります。このように自然のリズムに逆らわないように少しずつ慎重に乾燥させていきます。●さらに乾燥半ばで半日程度一旦乾燥を止めます。こうしてさらに全体を馴染ませます。私はこの作業を「お米を寝かせる」と呼んでいます。その後乾燥を再開しますが、乾燥状況を見極めもう一度この「お米を寝かせる」場合があります。決して急ぐことなくゆっくり乾燥させていきます。●そして最終的に籾水分が15~15.5%に落ち着くようにします。最期の段階は手動の精密水分計で何度も水分確認をします。乾燥作業は栽培の仕上げであり、緊張が伴います。丹精込めてここまで育ててきた無農薬のお米です。最後まで気を抜かず集中して仕上げていきたいと思います。この乾燥という最後の仕上げは、まさに最後のとても心の籠もる大切な仕事です。

出荷について

出荷は私(代表)の妻が主に担当しています。栽培から出荷まで私達が、はらだ自然農園としてどのように思い考えているのか端的に述べてある当農園の旧ブログがあったので、ここで全文を紹介させて頂きます。

2017.01.12 Thursday
大切なこと

お正月は(もうすっかりお正月気分は抜けたが・・・)普段あまり行かないような所に行く機会がある。そこで何かしらの仕事をしている人の、いち客として、人に出会う。そして何だかしみじみ感じた。ハウンドドッグではないが、愛がすべてさ、と、うーん、こう書くと背中の上あたりがむずむずするが・・・でもそう感じたことは事実だ、仕事に愛のある人がいる、接する人に何かしらの愛だの思いやりだの優しさなりを感じさせる人、そんな気持ちで仕事をしている人がいる。

農園の中で、私は栽培を、妻は出荷を主に担当している、もちろん私は代表として出荷を含めた農園全体を見なければならないし、妻も農繁期には農作業に精を出す。そしてお互い仕事について話し合い意見を交換する。

私はお米を栽培しているが、栽培者の心はお米に伝わる、そう深く信じている。だから稲の前では、ある意味すべてを見通されているような気がするし、人格ならぬ稲格みたいなものを感じ続けているのかもしれない。そしてそんな私自身の懸命なお米を妻が袋に詰めてお客さんに送り届ける。この出荷という仕事に従事する妻の心もまた(お米に及ぼす影響としては)栽培者と同じくらい大切だと思っている。だから出荷担当者である妻がお米を袋に詰めて送り出してくれることで栽培者である私の弱点のようなものを補ってくれているように感じる。そうして初めてはらだ自然農園のお米はお客さんに送り届けることができる商品として完成する。

いつもありがとう、そう何もかもすべてに。

大切なことは、心がこもっているかどうかなのだ。

改めてそう気づかせてくれた仕事人達にありがとう。

思いよ、届け。

京都丹波の里はらだ自然農園の旧ブログから


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