
Vaundy(バウンディ)、作詞・作曲・編曲をすべて手掛ける若きシンガーソングライター。
その名を初めて知ったのは今年(2023年)の夏、ある大規模な野外フェスでトリを飾ったと聞いた時。
そんなに人気あんの?バウンディ??
でも家族がスマホで聴いているのを横でちょっと聴くぐらいでは伝わってこない(そう、時に若者の曲は覚えにくい・・・)
今冬(先日のことだが)家族がVaundyのテレビライブを観ていた。
誰?バウンディ?フェスでトリを飾った?あー!横で聴いてみる。
妻いわく「彼は凄い」「天才」。ふーん、まあ悪くない、少し興味が出る。Vaundyの特集番組が録画してあるというのでついでに観せてもらう。7曲ぐらいあった。
うん、確かに、まぁまぁいい、でも若者の曲やな(感覚が新し過ぎる・・・こりゃ歳の差だな)。
ちょうどその頃、フィンランドの鬼才アキ・カウリスマキ監督の映画にはまっていて、そこで使われている音楽が古くさくて素晴らしすぎて、サウンドトラックを買ったばかりだった。ロック、ブルース、そして昭和の歌謡曲のような哀愁漂いまくりの歌の数々、どれも最高に味がある。どこでこんな古くて良い曲を見つけてこられるのだろうか?これこそロックじゃないか、このブルースは何て心に染みるんだ。
私は昔の曲のほうを好む。ボブ・ディラン、ジミヘン、ブルース・スプリングスティーン、BBキング、マイケル・シェンカー等々、そして古い数々のブルース。
話が少しそれたが・・・そんな訳で古い音楽を好む私には”Vaundy”は若過ぎると思ったが・・・ちょっとあれ、そう、Vaundy、また聴かせてくれへん?、と妻に頼む。私は台所で料理をしながらVaundyの曲を聴いていた(農閑期、私は時間があれば料理当番を引き受ける、どうでもいい話だが・・・)。もう一回かけて、もう一回、もう一回、心地いい、リズムがいい、心がときめく、気がつけばもうすっかり魅了されていた、そして早々にCDまで買った(CDを買うのは本当に気に入った時だけである)。
ちなみに冒頭で述べた夏の野外フェスには家族も行ったが、私は送迎を買って出た。会場の入り口付近で彼女らを下ろしたが、お祭りの雰囲気、若者の熱気・高揚感がじんじんと伝わってきた。「凄いもんだな」「青春だな」「何かいいなあ」、こっちまでワクワクしてくるほどだった。
先日(今冬)、家族とVaundyが歌うテレビ番組を観ていると・・・
「これこれ、この歌”しわあわせ”、フェスで歌わはったんやけど無茶苦茶良かったで」「数万人の観衆すべてに届く圧力があってん」
確かにこれを壮大な野外会場で聴けたら素晴らしいかもしれない。
「もしかしてそれって日が暮れる頃に歌わはったん?」
「うん、そうやな」
情景が浮かぶ、太陽が西の山に沈み、風が少し涼しくなり、空が赤く、そしてだんだんと薄紫色へと変わっていく、あの空の下に響くVaundyの”しわあわせ”・・・
私も一瞬、空想の野外会場にいて、その空の下でVaundyの”しわあわせ”を聴く。
青春のときめき。
青春時代が夢なんてあとからほのぼの思うもの 青春時代の真ん中は道に迷っているばかり(「青春時代」作詞:阿久悠)
という昔の歌がある。
またブルーハーツにこんな歌がある。
たった一つの小さな夢追いかける若者がいて たった一つのその命を燃やし続けている (「ブルーハーツより愛を込めて」作詞:甲本ヒロト)
私はVaundyの「しわあわせ」を聴くと涙が出ることがある。
あの夏の空の下に響き渡るVaundyの”しわあわせ”・・・
それは、例えば道に迷っていたとしても、青春の、言葉では決して形容できないほどの、若者のひたむきで懸命な命の輝きを感じるからだと思う。
Vaundyさん、素晴らしい曲を有難う。
