とんぼ
2月にしては暖かい日が続く。
気がつくと部屋にハエがいる。ブンブンブンブンあちこち飛び回る。
無闇に殺してしまうのも何だか気の毒な気がして生け捕りを試みる。袋や紙コップで捕まえて外に逃がしてやる作戦だ。
しかしなかなかうまくいかない。
そうだ、そうだ、そうだった、すっかり忘れていた、昔よくやっていたやり方。
そう、ハエと言えど、言葉が通じる、気持ちが通じるのだ。
窓を開け、ハエに声をかける。「ハエさん、ハエさん、こちらですよ。ハエさん、ハエさん、こっちですよ(この窓の外に向かって飛んでいくんだよ)。」
これが意外とうまくいく。もちろん100%ではないし、十中八九も厳しいかもしれないが、それでも、これは偶然ではないと思わせる、ハエと人との何かしらの心の交流みたいなものを感じることができる。
そこで、先日、久し振りに試みた。
「ハエさん、こちらですよ。」
あれだけ逃げ回っていたハエが、一声、指さす窓に向かって一直線に飛び去っていった。
ハエにも心あり。
もし困ればお試しあれ。
追記
私は、自然農法や自然栽培でお米を育てる百姓であるが、上で述べたのと同じように、稲や田んぼの生物達と、何かしらの心の交流があると思っている。稲や田んぼの生き物達は、私のことを何でも知っているように感じているし、畦を歩く足音もきっと聞いてくれていると思っている。