
~私は京都丹波の山ふもとで自然農法米・自然栽培米を育てている専業農家である~
プロローグ
お正月、実家に帰ってゴルフの話になった。
「兄貴、まだゴルフやってるん?」
「農家になってから全くやってへんで」
・・・???
そう、私は17年前(2008年12月頃)、独立して農家になる時に完全にゴルフをやめることにした。ゴルフをやる余裕なんて全くなくなると思ったからだ。初めて買った中古車より高かったアイアンセット(ゴルフクラブ)は潔くリサイクルセンターに持って行った。
それはともかく“当記事のタイトルに全くそぐわないやないか?”と思われたことだろう。
でも当記事は私がこの身体で体感した本当に真面目な体験談から成っている。そして私はその体験を通して体感した当記事で紹介する“ゴルフがうまくなる練習方法”を信じている。
だから真剣にゴルフがうまくなりたいゴルファーにとって当記事は最後まで読む価値はあると真剣に思っている。
しかし初めに断っておくが、決して楽な方法ではない。表題通り“百姓流”であり、とても地道であり、それはそれは大変な方法である。
だから当記事で紹介する“ゴルフがうまくなる方法”は、遊びでゴルフに親しんでいる人には向かない。ゴルフに人生を賭けている人に読んで頂ければと思っている。大変おこがましいかもしれないが、スランプに陥っているプロゴルファーにもきっと役に立つと思っているほどである。
ちなみに、当記事で紹介する方法を弟に伝えた時の反応は、とてもとても冷めたものであったことを言い添えておく。が、それはただ単に彼がゴルフスイングの真髄に気づいていないだけか、または常識人故にである。
さて、キツネに騙されたと思ってお付き合い頂ければ幸いである。
3年ぶりに振った1番ウッド
農家になって(ゴルフをやめて)3年が経った頃、子供に「スポッチャ」に連れて行ってくれとねだられて、スポッチャに足を運んだ。娯楽スポーツ施設である。その一角にごく小さな“ゴルフの打ちっ放し”があった。私は3年ぶりに白いゴルフボールめがけて一番ウッドを思い切り振った。
パコーン!手元に伝わるヘッドの芯で捉えた心地良い感触。ウソ!マジ!
何回振っても同じように気持ち良いほどにボールを捉える。
それも過去一番。過去イチのスイング感覚。
わかるわかる、すべてが分かるのである、どうしたらボールを芯で捉えることができるのか、身体の使い方が分かるのである。その感覚が明確なのである。自分の身体が明確なのである。
若かりし頃のゴルフ
その昔、私は友達に誘われて20代後半でゴルフを始めた。それから10年ちょっとゴルフに親しんだ。と言ってもその間コースに出たのは初めの5回程で、私のゴルフ人生は、気が向いた時に“打ちっ放し”行って、ひたすらボールを打つ“打ちっ放し”通いだった。若くて体力もあったので、平日の打ち放題では1000球ぐらい打つこともあった。私は一時期色々な教本を読んで(当時はネット動画のようなものはなかった)ゴルフのスイングを研究した。簡単なスイング研究メモも作った。
グリップ(ゴルフクラブの握り方)、スタンス(足の位置)、体重移動、トップの位置、フェースの向き、クラブの軌道、タメ、身体への意識(どこに意識を向けるのか)、スイングイメージ等々。
スイングは水物
前述のように、私は私なりにスイングを研究した。
しかし、しかし、しかしである。ゴルフスイングは水物。
その日の体調によってコロコロ変わるのである。
前回うまくできたことができない。前回つかんだ感覚がつかめない。前回つかんだコツがコツでなくなる。
シャンク(クラブフェースに当たらずにシャフトの根元に当たり、ボールが大きく右にそれること)が連発する。
そして私は時にはまた一からスイングを構築し直すのである。その繰り返し。
ああゴルフは難しい。プロゴルファーの凄さよ。
本編~ゴルフがうまくなる百姓仕事~
鍛えられた体幹のバランス
さあ、ここからが本題である。
初めに話を戻すが、前出のスポッチャ(娯楽スポーツ施設)で3年ぶりにゴルフクラブを手にした私が、何故ボールを芯で捉えることが出来たのか?何故過去イチのスイング感覚を体感することが出来たのか?何故20代の体力がある頃より40代の方がスイングが良くなったのか?
ここからは私の主観であるが、
体幹が強くなったからである、と思っている。
体幹が鍛えられたからである、と思っている。
体幹のバランスが良くなったからである、と思っている。
いや、強さだけなら20代の頃の方が強いかもしれない。
だから正確には強くなったというより、体幹のバランスや、体幹の使い方が良くなったのかもしれない。
そう、それは日々の百姓仕事の成果である。百姓仕事を通して得た身体の使い方である。
ゴルフスイングに適した農家の仕事とは
では、ゴルフが上手くなるために野良仕事をしろ、と。
実は、ゴルフのスイングに直結する農家の仕事がひとつだけある。
スイングに通じる農家の仕事。それは草刈りである。草刈り機(刈払機)を使って行う畦草刈りである。
なーんだ、そんなことか、そんな単純なことか、と思われたかもしれない。
刈払機についてご存じの方もおられるだろう。田舎に足を運べば農家が刈払機を使って畦草を刈っている光景はよく見かける。刈払機のエンジン音はある意味夏の田舎の風物詩とも言える。ホームセンターでも扱っているので農家に限らず所有しておられる方もおられることだろう。
そう、背丈より高い刈払機を両手に持って左右に振りながら草を刈るのである。
なるほど、ゴルフのスイングに似ていなくもないな。しかし・・・それにしても・・・
なんだとーこれだけだとーバカにするなー
そう、そう思われても仕方がない。
そこそこの長さがある刈払機を左右に振る=ゴルフスイング
畦草刈りの奥義
ところがどっこいである。たかが畦草刈り、農家の誰もが行う畦草刈り、されど畦草刈り、馬鹿にすることなかれ。
この刈払機を使った畦草刈りには、畦草刈りなりの見逃せない大切なポイントがいくつかある。畦草刈りなりの奥の深さがあるのである。
若かりし頃、空手の道場に通ったことがある。そこの師範は決して背の高い方ではなかったが、師範の足蹴りは、足が異様に長く見えた。師範が蹴ると実際よりうんと足が長く見えるのである。
畦草刈りも同じで、上手な人が刈ると刈払機が長く見えることがある。そして身体の使い方が安定していてブレがなく無駄がない。
例えば井上直弥のボクシングや、イチローのバッティングや守備は、無駄がなく芸術的でとても美しい身体の使い方をしている。
畦草刈りはここまで技術的なものでは決してないが、身体を使うという点においては同一線上にあると言える。後述するように、足場の安定しないところで、長時間、長期間、刈り続けるためには技術的工夫は必要であり、ないよりあったほうが絶対いいのである。
畦草刈りの実際
では実際に行っている自分の畦草刈りの話をしてみよう。
とは言うものの、私の行う、行ってきた畦草刈りは、そこまで技術の追求はしていないし、ゴルフほど深く研究もしていない、そもそもゴルフと違って好不調の波も少ない。もちろん工夫は試みるが、基本的には日々刈り続けるのみである。
私達の田んぼの多くは山ふもとに位置しているため(平地に比べると山ふもとの田んぼの畦の面積は半端なく大きい)農繁期は連日草刈りに精を出さなければならない。
毎日毎日、毎日毎日、草を刈るのである。
仮に刈払機を1秒間に1往復させるとすると、1時間で3600往復する計算になる。
例えば午前1.5時間、午後1.5時間、畦草刈りを行えば、刈払機を一日10800往復させる計算になる。午前午後2時間ずつなら14400往復になる。それを春から秋にかけて行う。もちろん田植えや稲刈りなど他の作業もあるので畦草刈りばかりしているわけではないが、一年を通した農作業の中で一番時間を割くのは断然畦草刈りなのである。
田んぼの畦なので、場所によっては足場はとても悪い。デコボコしていたり、傾斜していたり、石があったり、モグラなどが穴を開けていたり、雨で滑りやすくなっていたり、綱渡りのように狭い足場の所もある。また時にマムシが出てきたりハチが巣を作っていたりするので突然出てくる生き物にも対応できるようにしていなければならない。
刈払機の燃料タンクを満タンにして1~1.5時間くらい刈り続ける、あまり無駄な動きをしていると疲れることになるので、必然的に動きは効率化してくる。
畦草刈りの実際が、実際のゴルフスイングに直結している。
畦草刈りは身体の軸を安定させて行う農作業(運動)だからである。
刈払機を快適に扱うためには①足腰をしっかり安定させ、②軸をぶらさず安定させることが基本になる。草が繁茂しているところでは刈る時に結構な力がいる。特に草が大型化・密生しているような所では刈払機の刃を右から左に動かすスピードを上げ、かつ草を刈りきる“瞬間”に跳ね返ってくる反動を抑えなければならない。そのためには足腰を踏ん張り身体の軸をしっかり安定させなければならない。1作業1~1.5時間、何千往復、身体の軸は自ずと安定してくる。そして畦草刈りではこれを“動的”に行う、つまり軸を移動させながら(前進しながら)行う、刈り終わった瞬間に次ぎのエリア(草)に向けて数十センチ前へ移動する。
もうひとつのポイント
そしてもうひとつゴルフに通じるポイントがある。
刈払機の刃には色々な種類があるが、主として使う刃のひとつは“金属刃(チップソー)”である。チップソーとは、金属で出来た円盤上の外周に沿って鋭利な金属片チップを多数埋め込んだものである。この鋭利なチップが草を刈る。
このチップ、作業中(刃の高速回転中)に石などの硬いものに当ててしまうと切れ味が悪くなるし、強く当ててしまうと簡単に飛んでしまう。チップが飛ぶと金属刃の性能が損なわれるが何より厄介なのは刃のバランスが崩れてしまい刈払機の振動が大きくなることである。刈払機による作業の肉体的疲労は、物理的な単純肉体疲労だけではなく、騒音の他、この振動によるところが大きい。チップが欠けていない刃の振動は少ないが、チップがひとつふたつと欠けてくると明らかに振動が大きくなる。チップソーは一枚何千円もするので度々新品に交換する訳にはいかない。
よってチップソーを使う時は石などに当てないように細心の注意を払わなければならない。しかし石などの障害物を大きく避けていては肝心の雑草を刈り残してしまう。もちろんナイロンコードタイプの刃で刈り残した所を刈って回ることもできるが(実際にそうする場合もある)、二度手間になる。
だから出来ることなら、石や支柱や壁などの障害物の近くも刈り残しがないように刈りたい。これには一定の技術がいる。ゴルフクラブより長い刈払機を一定のハンドスピードを保ちながら障害物すれすれに刈り抜けなければならない、それが困難なら刈払機をぶらさないように固定してギリギリまで近づけなければならない。
刈払機の手元(グリップ)からチップの先までおよそ125cm。ゴルフクラブの一番ウッドの長さはおよそ115cm。ちなみに刈払機の全長は185cmほど。
畦草刈りでは、その距離感覚を1時間で3600回も確認できる。
同じシチュエーションはない
前述したように、田んぼの足場はデコボコがあったり傾斜があったりして変化に富んでいる。畦草の生え方も多様である。生き物もいる。
極言するなら、刈払機の一振り一振りに同じシチュエーションはない。違うシチュエーションに合わせて一振りごとに微妙な変化を与えながら実際には刈払機を操っているのである。ほぼ無意識に。
そう無意識に。だから自分で書いていて何だか“たかが畦草刈り”に大げさやなあと自分で自分に関西風に突っ込みを入れながら書いているが・・・いや“されど畦草刈り”・・・
今までになかった素振り感覚
私は17年前に完全にゴルフをやめたので普段はゴルフのことはほぼ完全に忘れている。それでも年に数回、何かの拍子に何も持たずに手だけでゴルフの素振りを1~2回することがある。
その時の私のイメージではクラブフェースの芯でボールの芯を確実に捉えている。
ウソつくなー、実際には当たるもんかー。
でも言いたい・・・
この素振り感覚、ゴルフ(打ちっ放しだけど)に凝っていた若かりし頃には決して体感しなかったことである。出来なかったことである。
ゴルフスイングの真髄
若い頃より今のほうがいい
具体的に言うならゴルフクラブでゴルフボールを打つ時の身体の軸の位置である、身体の軸がここにあるという感覚である、ボールにインパクトする瞬間の身体の軸の感触である。
そう、私は確かにゴルフの素人であり、ゴルフは上手くない。他のゴルファーと比べて自分が優れているというつもりは毛頭ない。そもそも私はゴルフを完全にやめた人間である。ゴルフに対する自分のプライドもない。
私がここで比べている相手は唯一ただ一人、ゴルフをしていた若かりし頃の自分である。
ゴルフをしていた頃より、ゴルフをやめてから数年経過した自分、10年以上経過した自分のほうが身体感覚がいいことである。
ゴルフスイングは身体の軸がすべて
昔読んだ教本の受け売りかもしれないし、もう少なくとも20年以上はゴルフに関する本も読んでいないのでよく分かっていないだけかもしれないし、これはゴルフに関する当たり前のことかもしれない。
17年前にゴルフをやめた者がゴルフについて語る資格はないかもしれないが、それでも今しみじみ感じることは、自分の身体だけで感じることは、ゴルフスイングは身体の軸で行うものであるということである。若かり頃も“軸”は意識していたと思う。でも“軸”が分からないのである。常にあいまいで確かな感触として掴めなかったのである。そして軸以外の細かい技術的なことも含めてああでもないこうでもないと試行錯誤していたのである。今なら思う。他の要素は枝葉に過ぎない、勝手についてくるものである。ほんまかー。
まあ、17年前にゴルフをやめた元素人ゴルファーの言うことなんかに誰も耳を貸さないだろう。
えーそう、分かってはいても軸はぶれるし、体幹は強くならないし・・・まだ話すか???
そこで提案、まじで提案
命を賭けるぐらい真剣にゴルフが上手くなりたい人がいるなら、藁にもすがる思いがあるなら、その藁だと思って、提案をしたい。
高齢化が進んで畦草刈りに苦心している田舎に行って畦草刈りをやってみませんか?という提案である。気まぐれにちょっとやるのではなくて、1カ月、いや最低でも3ヶ月、最低でも週2回、一日3時間以上。農家ときっちりバイト契約する。ボランティアではなくバイト契約。
身体の軸バランスを意識した、こんな単純トレーニングを、一日3時間長期にわたって続けることができるのは畦草刈りしかない(それに草を刈った後は散髪後のようにスッキリして気持ちが良い)。真剣にそう思っている。もちろんプロのスポーツインストラクターが考案する素晴らしいトレーニングメニューは数多くあると思う。でも畦草刈りも捨てたものじゃない。色々な足場で色々な体勢で毎回微妙に違うシチュエーションで体幹トレーニングができる。併せて前述したような距離感を養うことができる。
刈払機などを使って草刈りを行う時は必ず保護メガネを着用して飛散物(小石、草など)から目などを守って下さい。
最後までお付き合い頂きまして誠に有り難うございます。感謝申し上げます。
